2015/02/19

大学生

 

李さんと宋さんは共に27歳。山東省出身山東師範大学時代の同級生である。昨年2014年4月、二人はパソコンを抱え、すべての貯金を元手に湾头村へやってきた。二人の部屋は広さ20平方メートル。その狭い空間の中にパソコンが二台、鉄製二段ベッドが一つ。ここが二人の事務所兼寝室兼倉庫である。

 

 

李さんが店長である社員総勢二人のネットショップは確実に売り上げを伸ばしている。彼は「若い人しか出せない柔軟な発想と情熱で、淘宝(タオバオ)村全体にとっても元気を与える存在になりたいですね。」と語る。

  

 

湾头村のい草を使った手工芸品は数百年の歴史がある。以前、手工芸品を別の地域へ売るルートは一つしかなく、状況は厳しかった。多くの工芸品製造者が倒産を余儀なくされたという。その結果多くの村民はよその土地へ出稼ぎへ行くようになったそうだ。

 

 

この状況を好転させたのが、2005年。村に住むインターネット好きの若者の存在であった。彼らはインターネットに通じており、これまで、年配者が考慮できなかった世界に目を向けるよう助けてくれた。ネット上で売り買いできる! 湾头村の伝統あるい草製品を世に売り出せるルートが開けたのだ。 

 

 

今では、若い人は家から出ることもなく、自宅で淘宝(タオバオ)ショップを開いている。村の雰囲気も昔とは異なり、昔のように一日が日暮れで終わるのでなく、深夜まで明かりが消えないようになった。 

 

 

李さんと宋さんも例外でない。二人も深夜12時を過ぎてやっと就寝。朝9時に起床の毎日だ。

李さんと宋さんの部屋は寒く、マイナス5度というのはいつものことだ。布団をひざ掛けにし、かじかむ手をこすりつつパソコンに向かう。「あっという間に一日が過ぎて、忙しくてご飯も食べれず、友達も随分失った気がする・・。」と李さんは言う。

 

 

 3万元(20万円)分の段ボール箱を抱えてやってきた

 

2015年2月7日は、旧正月休み前の最後の営業日だった。村中が一年で一番忙しい日だ。多くのネットショップ経営者があまりの忙しさに臨時のアルバイトを雇ったが、二人は自分たちだけで乗り切ろうと決めた。李さんは、「大丈夫。疲れてない!」と自分に言い聞かせている。ハードワークではあるが、二人は充実感に満ちていた。

 

 

二人のこれまでの歩みを聞いた。決して、順風満帆とは言えない過去である。2012年大学卒業後、二人は段ボール箱を生産する会社へ就職した。2014年初め、何気なく目にした新聞の記事で湾头村の淘宝(タオバオ)ショップでい草工芸品が年間取引額1億元(20億円)であると知った。

 

 

李さんは、ネットショップがこんなに栄えているからには、それに合わせて関係する配送や梱包用品なども良いビジネスになるに違いないと考えた。彼は、段ボール箱を販売することに決めた。2014年4月、李さんと宋さんは湾头村にやってきた。1,000件の淘宝(タオバオ)ショップが一軒当たり4-50個を買うとして。。。と見積もり、3万元(60万円)を超える段ボール箱を仕入れ、湾头村に入った。

 

二人が予測もしなかったこととして、二人が段ボール箱の商売を始めて一ヶ月も経たないうちに5-6件の段ボール箱を扱う店ができた。厳しい競争は免れず、利益がほとんどなくなった。「自分の発見したことは、自分だけでなく多くの人も発見することなのだ。」二人は途方に暮れた。

  

 

  簡単にあきらめるものか

最初の計画は失敗に終わったといえ、二人は次なるアイデアを必死に考えた。その結果が、淘宝(タオバオ)ショップを開き、手工芸の座布団を売ることだった。李さんは、他の物に比べてい草の座布団はコストが安く、手持ちの段ボールを使えることにもなるし、一石二鳥だと思った。「最高の品質こそ、顧客の求めているものだ」この言葉が二人の経営理念となった。数々の試行を重ね、半年たってずいぶん収入は安定してきた。今では毎日800元(16000円)ほどの売り上げがあるという。

 

  安定したようだが、まだまだ注意は怠れない

 

ショップ経営をする中で、李さんは、長期契約で協力を申し出て入れる職人と出会えた。李さんは、多くのショップのように安さの追求だけが目的で職人を選びたくないと言う。彼が重視するのは職人の技術と製品の作りの確かさである。李さんはこう語る。「わたしは価格で勝負でなく、製品の品質で勝負したい。」

 

淘宝村  

 

夜10時過ぎ、湾头村が静けさに包まれる時間だ。李さんと宋さんも冷たいベッドの上に横たわった。ここに来て半年、初めて夜中の12時より前に寝れる。と言う。

 

 

李さんの新年の希望は、

自分の設計した新製品がヒットしてほしい。

また、国のデジタル取引に関する法がより良くなって、フェアな競争のできるフィールドを整えてほしい。ということ。

 

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